メディア掲載情報

【雑誌掲載】2022年8月号CO・OPステーション

若者の次の一歩をサポート①
「高校中退しても自分で進めば次の道は必ずある」
 
 不登校や高校中退を経験して、次のステップを模索する子どもたちは少なくありません。そういう若者をメンタルも含めてサポートしていく個別学習塾が、一般社団法人ニュールックが運営する「TOB塾(とぶじゅく)」(西宮市)です。代表理事で塾長の山口真史さん(41歳)が大切にするのは、「人はどうであれ、自分の人生は自分で進められる」という「やってれば何とかなる」的な精神。それは山口さん自身の歩みの中で得た確信でもあります。
 「TOB塾」は、2013年、塾長の山口真史さんが、西宮市の閑静な住宅街にある一軒家でスタートした個別学習塾。“Think Outside the Box”の頭文字から名づけられた塾名には、「型にはまらないで考えよう」「中退しても中退で終わりじゃないよ」というメッセージが込められています。
 「それまで私は中・高校の教師をしていたんですが、高校中退など従来の枠組みからこぼれていく人たちのフォローができればと立ち上げた塾です。うちの塾でいちばん大事にしてほしいのは、不登校や中退した自分をダメだと思うのではなく、これからどう進みたいかを自分で考え、自分で決めて進むことです」と山口さん。
 現在、塾生は10~20代前半の約30人。通信制高校に進んでいる子をはじめ、全日制高校でも普通の塾では難しい子、高校受験や大学受験を希望する子、大学卒業後も次の一歩を求めて資格を取得したい人などさまざまです。
 入塾の前には、親子で面談して塾の説明と同時に本人の状況をていねいにヒアリング。それに合わせて塾でできることを明示。入塾が決まると、手続きのほか、曜日などを決めて、その人に合わせたカリキュラムを組んでいくという形です。また希望があれば、3か月に1回程度、保護者との面談も。「たとえば、高校中退して通信制高校に進学したが、すぐに通う意欲がなくなったという例です。まず通えなくなった状況を聞き、その通信制に行きたいのか、あるいは高卒認定試験を受ける場合にはどうなるのかを説明。本人が高校に求めるのが、友達づくりか、学歴なのかなども聞いて、塾でできることを話していきます」
 正規スタッフは現在2人。ほかに社会人スタッフ5人と学生スタッフが10数人です。「私の個別授業では、個人に合わせた勉強法で必要科目を学ぶほか、1週間にあった悩み事や心のモヤモヤなどの話を聞いて、それについてホワイトボードに書き出して整理したりもします」
 塾生は講師と連絡先を交換し、プライベートな相談や雑談をしたりも。それだけに講師は、得意科目と同時に、塾生との相性も考慮しながら決めるそうです。
 
子供が一人で生きていくために
 
 TOB塾の塾生は、どう巣立っていくのでしょう?
 高卒認定試験に合格して終える子がいれば、大学や専門学校、高校に進学する子、トップクラスの学力を希望して違う予備校につなげる子などもいて、卒業のタイミングもそれぞれ。今年から社会人になった人もいます。
 「中学で不登校になり、親が周りの目を気にして日中は家から出ない生活になっていた子です。そのころ、うちとつながり、趣味が無線や電車などとはっきりしていて、頭の回る子だったので、通信制高校に進みながら、趣味の機械系の資格を取得。大学は法学部に進学しましたが、得意なエンジニア職で採用となりました」
 自分の好きな領域を突き詰めながら進めた例です。自分でやりたいことや興味のあること、希望の大学などがあれば、それを突き詰めるのを応援した方がいいそうです。「子どもが一人で生きていけるようになるには学校だけでなく、いろんな道がある。動ける状況であれば、その動けることを全面的にバックアップしていけば、道が拓(ひら)けていくはずです」
 ただ、親や大人側が「それでOKとするかどうか」で、結果は大きく変わると話す山口さん。塾生は若者だけでなく、「学歴のコンプレックスがあって、子育てが終わってひと段落したから勉強したい」、「キャリアを変えたいので勉強をやり直したい」という20~50代の人も通っています。 
 次号では、TOB塾設立の経緯などをお聞きします。(次号に続く)


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