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【プレス掲載】2016年3月2日朝日新聞朝刊

夜の街で出張授業
2016年3月2日朝日新聞朝刊



 高校中退者向けの個人学習塾「TOB塾」(西宮市高木西町)が、よるの街で働く若い女性の学習支援を始めた。高卒認定や資格に取得で昼間の安定した職につなげる狙いがある。
 塾を経営する山口真史さん(34)が女性の働く店を訪ね、始業前に「出張授業」をする。「ブルームーンラボ」と名付けたコースを、2月から尼崎市内のラウンジで始めた。
 毎週火曜の午後6時から1時間半。教科は英語、国語、数学、世界史で、自習用の手作り教材も渡す。約1年で、高卒認定試験合格をめざす。
 このラウンジで働く多くが高校中退者だという。このうち18歳の女性が「夜の仕事は若いうちだけ。高卒認定をとって将来の仕事の幅を広げたい」と受講を希望した。
 受講料月2万円を負担するのは経営者の岩本仁さん(35)。「僕も高校中退を考えたが、親の勧めで専門学校まで出た。それが後に商売上の信用につながった。歴史や言葉をしてば接客も向上する」と期待する。
 山口さんが出前授業を思いついたのは、昨年6月からシングルマザーの女性(25)が、看護師をめざして受験勉強に励む姿に接したからだ。
 女性は高校1年で妊娠し、中退。8歳と6歳の息子がいるが、夫とは6年前に離婚した。キャバクラで働きながら子育てをしていたが一念発起した。
 TOB塾はこうしたシングルマザーが通塾しやすいよう、厚生労働省の給付事業を利用し、昨年11月、子連女性が子連れ通塾対応コースも始めた。塾内にキッズスペースを設け、女性が勉強中は大学生のスタッフが子どもたちと遊ぶ。
 山口さんは「環境さえ整えば、高卒認定はとれる。看護師や保育士になりたいという夢がかなうよう、支援したい」と話す。

【阿久沢 悦子】

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